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ちょっとした動きでズキリと走る痛みに思わず眉を顰める。
擦り剥いた箇所からは血が滲み出ていたものの、我慢できない痛みでもなく。
服に隠れる場所だからまだいいとして、問題は。
このずぶ濡れの惨状をどう誤魔化すか、という一点だろう。

やっぱり足を滑らせた、というのが普通かな?

水浴びするにはまだ早い季節だし。
何より服を着たまま入る筈もなし。
・・・実際、原因はどうあれ結果は似たようなものだ。

そんなことを考えていて、ふと視線を感じて顔を上げると
執務室の窓からじっとこちらを見つめている三蔵の姿に悟空は思わず目を瞬かせる。
偶々休息でもしていたのか、一服していることに気付き
咄嗟に’やば・・・’と思う。

だが、今更気付かぬ振りができるわけもなく
悟空は窓辺へと駈け寄った。



「さんぞ! 仕事終わったの?」

「見りゃわかるだろう、休憩中だ。まだまだ終わりそうもねぇよ」

「なーんだ、こんなに気持ちいい天気だってのにな」

「ふん、てめぇと違って俺は忙しいんだよサル」



そっか〜と残念そうに笑っている悟空が側近くまで来た時に、三蔵は怪訝そうに顔を顰める。



「――どうした? それは」

「え? あ、池の縁にいたらさ、足滑らせちゃって・・・」



するりと出た言葉。三蔵は黙ったまま何も云わなかった。
悟空は焦りながらそんな彼をじっと見つめる。
彼が己の言い分をそのまま鵜呑みにするとも思えなかった。
実際、見透かすような視線にバレバレかもな、とは思う。
でも、こんなことは今に始まったことでもない。

気まずい空気が漂う中、三蔵は徐に手を差し出し、悟空の頭に触れた。
優しく撫でる手に気付くと同時にその手は離れる。



「そのままじゃ風邪ひくだろうが。さっさと着替えろ」



そう言ったきりくるりと背を向ける三蔵を悟空は呆然と眺めていたが
触れられた箇所から温もりが伝わってくるようで
身体の冷たさとは相反して心の中が暖かくなる。

「うん、わかったー!」と嬉しさから自然笑顔になった。










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突発的に思いついたので

20050510












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