Blessing




「・・・?」



微かに感じるモノに悟空は首を傾げる。
”彼ら”が時折自分に対して干渉しようとするのは常のことではあるものの
今回はその意味自体が理解できなくて。
考えてもわからないものは訊いてみるしかない
ここに連れてこられてからの経験上、悟空はそう学んでいた。






「たんじょーび、ってなに?」


夕食時、いつものようにその日一日の出来事を楽しそうに話していた悟空は
「そういえばさ〜」と思い出したように告げる。
思いもしない言葉に三蔵は目を瞬かせた。



「いきなりなんだ?」

「ん〜? 今日さ、みんな’おめでとう’っていってくれんの」

「・・・誰が?」

「だから、みんな」



三蔵は怪訝そうに悟空を見遣る。
そのとき、開け放っていた窓から入ってきた心地良い風が悟空の髪を
僅かに靡かせた。


「あ・・・また。’だいちのいとしごに祝福を’って・・・」



撫でられた頬を押さえつつ不思議そうに窓の外を見る。
その言動に’みんな’というのが何を指しているのか理解する。



「他にはなんて云われてんだ?」

「え? だから’たんじょーびおめでとー’とか、’おすこ、やかに’?
そんなかんじでさ、ほとんど’おめでとー’が多いかな?」



食べる手を休めない悟空と違って三蔵の箸は完全に止まり思案に耽る。

おそらくそれは当事者でなければおとぎ話だと誰もが一笑に付すであろう
悟空の『呼ぶ』声が距離に関係なく聞こえるというものと同じ類だろう。
大地の寵児を連なるあらゆるモノが愛しく思っても不思議ではないのだが。

―――誕生日?




「・・んぞ?」



すっかり黙り込んでしまった三蔵に悟空は小首を傾げる。
そんなに難しいことを訊いたのだろうか。
じっと見つめていると気付いた三蔵と視線が合った。



「なんだ?」

「なんだ・・・って、オレがきーてるんだけど?」

「あ?」



思い返してみて、そういや思案の元はコイツの言葉だったなと思い出す。
箸を動かしながら「生まれた日のことだ」と教える。



「生まれた日・・・って、オレが?」

「ヤツラがそう云ってんのならそうなんだろう」

「ふぅん。それっておめでたいことなの?」



心底疑問に思っているらしい様子に三蔵は思わず瞬きする。
だが、気が付けばずっと岩牢の中にいたという悟空には
そんな己が生まれた日だからと祝う理由が判らないのも無理もないのだろう。



「お前の言う’みんな’ってのは祝ってんだろう
じゃ、そのまま素直に受け取っておけ」

「ん・・・さんぞーがそういうならそーする」



窓の外へ向かいどこか躊躇いがちながら
「ありがとな」と嬉しそうに笑う悟空をさり気に目に入れながら
自分も何か祝いの言葉をかけるべきかと過りはしたものの
どうにも機を逃した気がしないでもなく。
特別な日だという実感がないのは確かなので、結局何も云わず
悟空もそんな三蔵の態度をそういうものだと思ったらしかった。







俗にいう’誕生日のお祝い’を本当に悟空が実感するようになるのは
まだまだ先の話









悟空’s Birthdey 記念♪

世の流れに逆らって(笑)当サイトにおける
’三蔵と悟空の出会い’は秋になっています
(by御礼小話過去作品)
なので『出会って最初に迎える悟空の誕生日』は
こんな風にこじつけてみました(笑)

・・・流石に段々ネタが尽きてくるようです(苦笑)
長くやっているサイト様の企画をを尊敬します〜


20050405






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