Calling





声が聞こえる。声なき声が。



(うるせぇ……)



なんだ? 身体が重い。どうしたんだ?



……ああ、そうか。



またしても自分が無様にぶっ倒れた事実を思い出す。

殺しても死なない身体を持っているとは思わないものの、脆い身体。
だからといって、側にいる連中を羨む事は間違ってもないが。



(……?)



周囲の空気が違う気がする。何が起こっている?


そう考えている間も、止む事無く聞こえる『声』。

昔からの、呼び声。だが、何故だ? 今は側にいるだろうが。
何を、呼んでいる? ……何を、泣いている。



よく知っている筈なのに、わからない。頭に靄がかかったような…。
そして、動かない、この身体。
もしかしたら意識すら、何処にあるのか判ってないのかもしれない。

その時。



「……。無茶ゆーぜ……なぁ、悟空」



…悟空? ……そうだ、あのバカだ。



意識がはっきりしていく。煩いくらいに俺を呼び続けた『声』の主。
結果、拾って手元に置いた子供。
だが。やはり判らない。「泣いている」訳が。





そして、目前に拡がった光景。

ボロボロになって倒れている数名の姿が目に入る。
よく見知った連中ばかりだ。
その中心に、一層小柄な人物を認める。



(……成る程な。)



普段の、子犬の如く自分に懐いている時とは、明らかに別人の表情をして。
相手を嬲り殺しにしそうな勢いで楽しんでいる獣。

あれは、自分を呼び続けた悟空ではない。
それでも、悟空である事には変わりないのだ。





重い身体に無理やり云う事を聞かせつつ、懐から取り出すのは愛用の銃。

誰もが自分の事に精一杯で、周りを見る余裕が無い中、銃口を空中へと
向け、引き金を引く。


ガウン!、と銃声が響いた。


ゆっくりと振り向いた悟空に対し、銃口を向ける。



「湧いてんじゃねーよ、このバカ猿」



いつもは自分の専売特許の筈の、不機嫌そうな、…冷たい金の瞳。
常では絶対に向ける筈のない表情。だが、現実。



「来い……」



自分を呼ぶ『声』は、まだ聞こえ続けている。
おそらく、以前と同じ、無意識のまま…。
ならば、意識を戻すまでの事。
でなければ、この煩い『声』は止む事はない。



「殺してみろよ、俺を」



殺せるものならば。

なぜか、確信できる。





(お前に俺は、殺せない)









END





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暴走悟空ネタ。書いたのは、Gファン本誌掲載時。
もう、立読みだったにも関わらず、しっかり記憶に残ってしまい
まさしく勢いで書いた物です。
この辺りの話は他のサイト様でも沢山あって、読み捲くりました。
今となっては”お約束”ネタの1つ。
嵌り始めた頃早々に、こんなツボな場面があるのですから
転げ落ちるのも当然だったかも(笑)









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