ありがとうございました♪

お礼の小話です


#5


「これはまた、見事な花の園ですなぁ」

「本気で言ってるのか?」

「居ながらにして春を感じる、普段篭りきりの貴方様には良いことでは?」

「限度ってもんがあるだろうが」

「ふむ・・・流石に器の数にも限度がありますからなぁ」



これはこれで風情がありますが・・・と棚の上にズラリと並べられた空缶を
感心するように眺める大僧正に何か違うのでは、と三蔵は頭痛を覚える。

日毎暖かくなる気候に伴い花の季節がやってくる。
白い季節の終わる頃にはそれまで閉じこもっていたのが嘘のように
朝早くから外で遊ぶようになった養い子は帰ってきたときには必ず花を持っていた。
自分と違い執務に追われ外に出ることのない三蔵に見せる為であろうが
一体どこから見つけてくるのだと云わんばかりに毎回違う花だ。
花瓶から始まり、コップ、湯呑に挿されたものでも充分だというのに。
それでも足りないとばかりに自販機の側にある空缶入れから拾って挿している。
どうせすぐに枯れるだろうとさして気に留めなかった三蔵だったが
何れも枯れる素振は見せず可憐に咲き誇っていた。
執務室のどこを見ても目に入る小さな花。
一見不規則なようで、それでいて色とりどりの同じモノのない花。



「ほほ、今までが殺風景すぎましたからなぁ
しかし御子は御自分の部屋には飾らないのですかな」

「アイツの部屋はそれこそ真っ先に花畑と化してる」

「ふむ
それにしても御子は一体どこから摘んでくるのでしょうなぁ
野草には違いないでしょうが知らぬ花ばかりで」



部屋を見回しながら感心したように大僧正が言ったとき。
パタパタと軽い足音が聞こえてきたと思えば扉がバタンと勢いよく開かれた。



「ただいまー!!
あ、じーちゃん来てたんだ!」



じーちゃんにもこれあげる!、と差し出された手には、可愛らしい小さな花束。



「ほほ、御子はいつも元気だの
爺が貰っても良いのですかな?」

「うん!」

「では頂きますかな」



受け取ると、悟空はにっこりと嬉しそうに微笑う。
そして、残りを三蔵に見せながら「な、また違うの見つけたんだ、きれいだろ?」と
差し出された手に、三蔵は呆れたように額を押さえた。



「これ以上どこに飾ろうってんだ、もう充分だろうが
あとは外で見て楽しむだけにしとけ」



目を瞬かせ、きょとんとした表情で小首を傾げる。
言葉の内容を理解して、持っている小さな花束に視線をやり、三蔵に戻す。
そして、困ったように笑った。



「え、と? 持ってかえってきちゃダメってこと?
さんぞ、お花キライだった?」

「んなこと言ってねぇ
というか、お前まだ物足りないってのか?」



軽く溜息を零しながら、安心させるかのように頭をくしゃりと撫でた。
沈みかけていた表情に笑顔が戻る。


「だって、きれいな色がいっぱいあったほうが、なんかあったかくなんない?
さんぞ、ぜんぜん外に出ないし。
こんなにきれいな色が外にあるの知らないんだろうなって」



俺も知らなかったけどな、
何気に続いた言葉に三蔵は僅かに目を瞠り
様々な色に溢れかえった執務室を見遣る。

木の葉散る頃とも白いモノが舞い散る頃とも違う、色とりどりの花の頃、
あの場所には色はなかった。



「ほほ、御子は三蔵様の分も花を愛でておられるの
今度三蔵様とご一緒に花見にお行きになるとよろしい」

「うん! さんぞーといっしょに見たい」



すっげーきれいなとこ見つけたばっかなんだ、と
屈託なく微笑う悟空を見つめながら。
だったらこの書類の山を少しはどうにかしやがれと心中思う三蔵だった。











春=花の季節という安易さで申し訳ないような
てか山の野草はそんなに種類があるのかしらと
思いつつ(笑)

20050403





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