ありがとうございました♪

お礼の小話です


#6



雨の日が続く時期が近付いている

白いモノのように怖いと思うことはないが苦手になってきたかもしれない、と悟空は溜息を零す。
キライではない。
時には歌っているように聞こえたりと、雨の降る音は気分によって様々に聞こえるから。

だが、一緒に暮らすようになって何度か雨の日を共に過ごしている内に気付いたこと。
普段から不機嫌そうな顔をしてはいても内心そうとは限らない己の保護者が
表情そのままに機嫌が悪くなる。
実際は微々たる変化。周囲の人間達はそんな些細な変化に気付くことはないだろう。
彼等にしてみれば三蔵という最高僧は常に不機嫌で近寄りがたい雰囲気を持っていると
認識されているのだから。

日頃から怒鳴ったり時には殴る、という
決して傍から見ていれば悟空に対し’優しい’などと思えない行為を繰り返す三蔵だったが
雨の日に限りその回数は激減している。
それは、悟空が彼にしては珍しく寺院内でおとなしくしている、というせいもある。
しかし、そうなってしまった要因は常以上の三蔵の寡黙さにあった。

いつも通りに悟空が話しかけても三蔵は言葉を返さない。
それどころか冷めた目で突き放すような視線で悟空を見下ろすだけだ。
何も云わない三蔵に悟空が焦れてわざと彼を怒らすようなことをしでかしても
鬱陶しげに見遣るだけで。
時々、心ここにあらず、といった状態になるときもあった。

そういう状況が繰り返され、一年を過ぎる頃には悟空も三蔵に倣うようにおとなしくなっていた。
そんな2人に周囲は当たらず触らずで。
重い空気は雨だけが原因ではないだろう。


今日も朝から雨。
時折気紛れに止んだかと思えば降り始めるが激しいものではない。
窓の縁に付いた腕に顔をのせた状態で、悟空はその光景を眺めていた。
目を閉じれば聞こえる雨音は、どこか優しい子守唄のように心地良く聞こえ
思わずうとうとしてしまいそうになる。
雲行きからすれば明日あたりは晴れそうだが、本格的に雨の時期に入るのはこれから。

何故三蔵が雨の日にそうなるかなんて知らない。
でも、自分が雪を怖いと思ってしまうように
誰にだってニガテなものがあってもおかしなことではないのだろう。
それに初めの頃に比べれば、ほんの僅かではあるものの確実に変わってきていると思う。

全く近寄らせようとしなかったのが、同じ空間にいても’邪魔だ出て行け’という
無言の圧力を感じなくなってきたように。
鬱陶しげに向けられる視線の数が減ってきたように。
思わず話しかけてしまったときに時折言葉が返ってくるように。

些細な変化を繰り返す内に雨の日でも常と変わらない状況になるときが
そのうち訪れるかもしれない。
その頃には自分もあの白いモノが平気になっているかもしれない。
今はまだとても考えられない状況の’いつか’がいずれくることをを想い
悟空はひとり胸をおどらせた。











三蔵様関連話であれば定番である
’雨'ネタに挑戦してみました
とはいえ、二次創作世界では定石でも
原作で扱われたのは一度・・・?(笑)
寧ろ埋葬編では雨より夜(闇?)に
トラウマある気が致しますが
(で、悟空は’光’ですよねv)
今ではちょっとした弾みで思い出す程度・・・
――というくらいで

20050602





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