ありがとうございました♪

お礼の小話です


#7


三蔵は最高僧という立場からやむを得ず遠出するときがある。
日帰りできる場合もあるが、寧ろ泊り掛けの遠方出張で不在になる方が多い。
状況的にどう頼み込んでも一緒に連れていってもらえず寺院に置いていかれる場合
悟空は専ら門限まで外で遊んでいる。
中にいても碌なことがないことを判っているからだ。
実際、ふと気がつくと門限が過ぎていた時や、そうでなくとも時間前に。
故意に締め出されることも頻繁であった。

今日もまだ早い時間にも関わらず門はきっちり閉じられている。
三蔵は説法に出掛けてしまい戻るのは明日の予定。
慌てないのは奥の手を知っているから。
裏手にまわり奥の院近くにきたところで
植木に隠れるようにあるのは、そうと判らない造りの小さな扉。
周りを伺いながらそっと開ける。
なんの抵抗もなく開いた扉の先には手入れの行き届いた庭と縁側があった。



「おや、門番めはまた時間を間違えましたかな」



通り抜けた頃を見計らったようにかけられた声の方向に視線をやると
ほとほと役に立たぬ輩ですなぁ、と
縁側に座っている大僧正が呆れるように溜息を零していた。
悟空は嬉しそうに笑って駆け寄る。



「じいちゃん、ただいま!」

「お帰りなされ。今日は何をして遊ばれましたかな?」

「あっついから水辺で遊んでた!」

「ほほ、御子は暑いのは嫌いですかな」

「なんで? 夏は暑いのが当たり前だろ?」



不思議そうに首を傾げる様が微笑ましく、大僧正は悟空の頭をくしゃりと撫でる。
本当に、この子供は何事も素直にありのままに受け入れるようだ。



「そういえば、今日は良いモノを頂きましてな
食事前ですが食べられますかな?」

「なに? 食いモン?」

「はい、冷菓子ですよ」

「ひやがし?」

「お待ちなされ」



聞き慣れない言葉にきょとんと呆けている悟空を縁側に残して大僧正は奥の間に姿を消す。
そう時間を空けずに戻ってきた彼は盆を持ち、載っているのは紙製のカップらしきもの。



「? なにこれ」

「ほほ、手に取ってみなさるとよろしい」

「う、うん」



目前に差し出された御盆の上に載っているモノに触れた途端
びっくりしたらしく手を引っ込める。



「なにこれ? 冷たいよ?」

「ほほ、冷菓子ですからなぁ。見るのは初めてですかな?」

「うん・・・あ、すっげー冷たくて気持ちいい」



改めて手に取り、「これで食うの?」とスプーンを握ると、興味深げに掬い
ぱくり、と含んだ。



「・・・甘い」

「お気に召されましたかな」

「うん! すっげーこれ美味い! 初めて食ったよじーちゃん。
こんなのあるんだ」

「ようございました。
では後程三蔵様のお部屋にも差し上げましょうかの
お部屋に冷蔵庫はありましたな」

「え、いいの? だってじーちゃんが貰ったモノなんだろ?」

「ほほ、どのみち爺ひとりでは食べ切れませぬ。
年寄りというものは冷やし過ぎるのも身体に悪いですからの」



滅多に表へと出てこない三蔵へ何とか繋いでもらえないかと。
云わば賄賂も同然のような供物品自体に罪はない。
喜んで食べてもらえるなら何よりだろう。



「今差し上げてもよろしいのですが」

「ううん、三蔵が帰ってきてからでいいよ」



どうせ勝手に中のモノに手を出したのバレたら怒られるし、と。
笑う悟空に、三蔵の躾の良さを感じる。
最も、いろんな意味を含んでの言付ではあろうが。



「ではそうしますかな
御子も遠慮なさらずに三蔵様にお土産にお強請りになられてはいかがかの?」

「え?」

「”外”にはこういった珍しいものもいろいろございますゆえ」



出発するまではなにかと一悶着あるようだが
一旦聞分けた後は、悟空は大抵大人しく留守番している。
偶のお強請りくらい許されるというものだ。



「そなの? いいのかな?
んじゃ思い付いたらそーする」

「ほほ、そうなされませ
御子は良い子ですからなぁ」



皺の刻まれた大きな手が再度頭を撫でるのに、悟空は嬉しそうに笑った。






夏真っ盛り
暑いのが当然なんだろうけど
連日30度以上ってのは参ります(溜息)

御礼なのに三蔵様いないってのはどうなんだろう
で、ある意味期間限定モノなのに
大僧正様出張りすぎなんじゃ・・・(笑)


20050806





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