#2


連れ出された”外”の世界は、いままで見ていた世界と違い
あまりにも様々な”色”に満ち溢れていた―――



盗賊に襲われた後。
渋々といった感じで連れて歩く三蔵の側で、周りの光景に悟空は目を奪われる。
いままでは地面と岩と、空の色だけだった。
だが今は、緑があって、紅や黄色も見え隠れする。
野に咲く花々、美しく色を変えつつある木々。

なんて、綺麗な世界なんだろう――――――



「おい」



見とれて止まりがちになる度に、自分を連れ出してくれた青年は苛立つ口調で先を促す。
「ぐずぐずしてんじゃねぇ」と時には手まで出してくる。



「いってぇ〜!! なんで殴るんだよっ」

「うるせぇ!! さっさと来ねぇと置いていくぞ!」



いつ見ても不機嫌そうな顔をして。
それでも気付けばちゃんと歩を止めてくれる。
放ったまま置いていくことはしない。


時折髪を撫でるように触れる風は、とても優しい。
澄んだ空気や、まわりの緑から漂ってくる香りが気持ちいい。


あの岩牢のあった場所とは、同じ世界と思えないくらいに




先程からなかなか思うように進まない状況に
自分でも幾度目だか判らないまま再度怒鳴りつけようと思い、顔を上げたとき。
いつのまに側に来たのか、間近にあった真っ直ぐに己をじっと見詰める金の瞳に
表情にこそ出なかったものの、三蔵は驚いた。



「・・・なんだよ」



内心の焦りを気付かれないように声をかければ。
目の前の幼子はにこりと微笑う。
それは嬉しそうに。



「おい?」

「ん〜綺麗だなって思って」

「は?」



なにいってんだとばかりに怪訝そうに眉を顰める三蔵を追い抜いて。
少し離れたところで振り返る。



「なぁ、ここ下りてったら何か食えるんだよなっ?
もうすぐ腹減って動けなくなりそうなんだけどっ」

「てめぇがいつまでものろのろ歩いてるからだろうが!
だったらさっさと歩けっっ」

「は〜い」




なんだか楽しくて。
腹は減ってるけど、こうやって歩いているのは嬉しくて。

届かないと思っていた声に、応えてくれるひとがいて。
届かなかった光は、十分すぎるほどに降注いでくれている。
それはとても、あたたかく、ついさっきまでの冷たさは嘘のようで。



相変わらず不機嫌な顔をしたままの綺麗なひとが
ちゃんと目の前にいることに幻ではないことを安心し

悟空の笑顔は止むことはなかった








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RELOAD4巻を見て、ふと思ったのですが。
出てくる果物、柿やら芋やらって・・・
三蔵が悟空拾ったの、秋・・・?
(この事実判明だけでも”悟空の誕生日説”ひとつ崩れますね)


20041011











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