#3



きれいな色に変わった葉っぱは、暫くすると
ひらひらと散り始めた。
その頃から、肌に触れる風が冷たく感じるようになってきて。

それは、あの場所を思い出させる。
冷たい、アノ場所を。

眠るときに使う毛布を被ると暖かくて。
夜になると、悟空は早々と頭から毛布を被るようになった。








「今日の仕事はこれで終わりです」



まだ陽も高いというのに。
執務室へ入ってきた大僧正はにっこりと微笑んだ。



「そんな筈はないだろうが」



常の書類の量と比べると
明らかに少ない。
三蔵は怪訝そうに目の前の老人を見上げる。



「いいえ、終わりです」



そう云いながら袂から徐に何かを取り出すと、机の上に置き、そのまま三蔵の方へと押しやる。



「・・・なんだこれは」

「おや、知りませぬか。
カードというものでしてな、物を買うときに後払いにできるものでして」

「それは判る。なぜ俺に渡す?」

「ほほ・・・街で買い物をするのであれば、便利な代物でございましょう」



まるで今から己が街へと出掛けるような物言いに、三蔵は訝しげに大僧正を見遣る。
そんな予定など立ててはいない。



「なにいって・・・」

「三蔵様」



言葉を遮るように呼んだ大僧正は、執務室の窓へと目を向けた。
今日も青空が広がっている。



「最近とんと冷え込むようになったと思いませぬか。
年寄りには少々辛い時期になってまいりましたな」



益々持って、三蔵は意図が掴めない。
確かに、季節柄冷え込みが強くなってきたようだが。
大僧正ともいう地位であれば暖も充分に取れる立場にいる筈だ。

そんな疑問に気付かぬかのように大僧正は言葉を続ける。




「三蔵様を含め我々の着る物は支給されております。
しかし、御子の着る物は流石にここには置いてはおりませぬ。
まさかあのような服装でこのまま過ごさせようとのお考えでもありますまい?」

「・・・・・・」



そういえば・・・と三蔵は思い当たる。
拾ってきた頃は一旦外に出ると日が沈む頃まで帰ってこなかった子供が
最近は早めに戻るようになった。
それどころか寺にいるときは大人しく自室に篭っているようで
何をしているかまでは知らない。
食事時にはいつもと変わらずその日に起こったことを煩いくらいに話していたので
これといった変化も感じなかったのだが。

悟空が身に着けているものは、動きやすさを基準にしたもので、頻繁に汚すことを前提にしたもの。
最初に買い与えたきりだったことを、今更ながら気付いた。
寺院から早々出ることのない三蔵は、あまり寒暖が判らないが。
云われてみれば確かに、あの服装でこれからの時期は辛いだろう。


三蔵は、徐にカードを手にすると、懐に仕舞いこむ。
その動作に大僧正はにっこりと微笑んだ。



「サルは?」

「ほほ・・・庭でお見かけ致しました」



扉口で振り返って肩越しに問うた三蔵は
「いってらっしゃいませ」と軽く会釈する大僧正を後に
庭へと歩を進めた。






その日の夜。
「似合う?」と新しい服を着てそれは嬉しそうに笑いながら
パタパタと走って大僧正の元へと駆け寄った子供を。
借り物を返しにきたことを兼ねて一緒に訪れた最高僧が
「走るな!」とハリセンで殴っていたとか。










寒くなってきたので衣替え(笑)
でも、人間である三蔵はともかく
悟空達に寒暖はあまり影響ないのかも・・・?
(あ…「寒い」「暑い」は言ってたような)

20041205





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